「三人の学生が笑った」という文と、「三人の笑った学生がいる」あるいは「笑っ た三人の学生がいる」という文のあいだには、明らかな対応関係があると思えま す。こうした対応関係に着目することによって、英語に関してしばしば議論され てきた区別 --- there存在文に現れうる名詞とそうでない名詞とを区別して、前 者を「weak NP」、後者を「strong NP」とする区別 --- とよく似た区別を、日 本語に関しても取り出すことができます。 この点を中心に、つぎのような話題を取り上げたいと思います。 1 所在とも所有とも異なる、存在を表す「いる」「ある」があること。 2 日本語における「weak-strong」の区別。 3 日本語存在文の意味論。