本発表で考察するのは、「A, if B」形式の文における量化と照応の 関係についてである。考察の中心になるのは次の文である。 (1) A donkey is placid, if it is female. (2)#Every donkey is placid, if it is female. (1)の'A donkey is placid'は総称文であり、しばしば全称量化の扱いを 受ける(あるいは'Most donkeys are placid'と同じ扱いを受ける)。 他方、(2)の'Every donkey is placid'も当然全称量化されるわけであるが、 しかしながら、(2)の方はあまり自然な文とは言えない。(2)の不自然さ は(3)になるともっと明確になる。 (3)*Most donkeys are placid, if they are female. とすれば、'a N'と'every N'の間には、全称量化だけではすまされない 関係が何か他にあるはずである。しかも、この問題は、単に、 'a N'と'Det N'との違いに帰することはできない。(4)はその例である。 (4) No donkey is placid, if it is female. さらに、if-clauseの動詞句の種類(stage/individual)も影響する(cf. (3))。 (5) Most donkeys are placid, if they are not hungry. 本発表では、if-clauseは量化と照応に関してどのような働きをもつ のか、また、このような文において照応が可能となる条件は何か といった問題について述べたい。 また、(1)のような文は、いわゆるdouble-bind problem(Barker 1997) を引き起こす文である。これに対しては、epsilon term semantics (Slater 2000)も提案されているので、これについても触れる予定である。 Barker 1997, E-type pronouns, DRT, Dynamic Semantics and the Quantifier/Variable-Binding Model, L&P 20. Slater 2000, Quantifier/Variable-Binding, L&P 23.